#17. 意味体系
[384]次の文章を読み、下の各問いに答えよ。
【比喩】
「頭が痛い」と言ったときには、文字通り「身体の一部としての頭が病気などの理由により痛い」という意味を表すこともあれば、別に「非常に心配している、悩んでいる、苦労している」といった意味を表すこともある。我々は文脈によってどちらの意味であるかを理解しているが、これほどかけ離れている二つの意味をなぜ理解できるのであろうか。
それは、「頭」の原義としての「脳の部分」ということと、そこから派生しての「脳の働き、思考力」という転義の結びつきが了解されているからと考えられる。深く日常生活に結びついているのでそれとは気づきにくいが、こういった表現は実は立派な比喩なのである。比喩の代表的なものに、A隠喩(メタファー)、B換喩(メトニミー)、(ア) に基づく提喩(シネクドキ)などがある。上に挙げた「頭が痛い」は換喩(メトニミー)の例である。身体部分を表す語を使った類似表現としては、他にも「手を汚す」「C腕が上がる」など多数見つけ出すことができるだろう。
問1)文章中の下線部Aについて、「足」の解釈に「隠喩(メタファー)」が関わる例として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- 一郎はとても足が長い。
- 不況で客の足が遠のいた。
- 脚立の足にひっかかった。
- あそこは足の便が悪い。
問2)文章中の下線部B「換喩(メトニミー)」を使った例として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- 朝食に目玉焼きは必須です。
- あの人はとにかく耳が早いね。
- このビンは口が小さいので入れにくい。
- アンパンのへその周りについているのは何ですか。
問3)文章中の (ア) に入れる語として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- 類似性
- 包摂関係
- 隣接性
- 類縁性
問4)文章中の下線部C「腕が上がる」はどの比喩と言えるか。最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- 直喩
- 隠喩
- 換喩
- 提喩
[385]次の【 】内に示した観点から見て、他と性質の最も異なるものを選べ。
【複合語の意味】
- 豆まき
- くぎ抜き
- 綱引き
- 麦踏み
- 草むしり
[386]日本語教育での形容詞の扱いについての説明として不適当なものを一つ選べ。
- 「大きい」「大きな」という語は、日本語教育では両方ともイ形容詞として扱うのが一般的である。
- 「暖かい‐暖かだ」「やわらかい‐やわらかだ」のような形容詞は、その活用において、イ形容詞ともナ形容詞ともいえる。
- 属性形容詞は客観形容詞ともいわれ、「若い」「少ない」のように主体の客観的な性質や状態を表す形容詞である。
- 感情形容詞は主観形容詞ともいわれ、発話主体の主観的な感情や感覚を表し、言い切りの形では第三者の主観を表すという特別な使い方をする形容詞である。
[387]次の【】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを選べ。
【「冷たい」の意味】
- 冷たい額
- 冷たい水
- 冷たい手
- 冷たい目
- 冷たい体
[388]次のそれぞれについて、【】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを選べ。
【「込む」の意味】
- 黙り込む
- 吹き込む
- 飛び込む
- 殴り込む
- 舞い込む
[389]次の文章を読み、後の問いに答えよ。
語義は外界の指示物との関係と語集合の中の他の語との対立関係との二面から規定されるという。
前者の面から語彙項目を分類しようとするのが、分類辞書にみられる方法で、指示物の体系としての枠組みを作り、それに個々の語を当てはめていくものである。このような分類語彙表として有名なものに1852年に発表されたP.M.ロジェの(①)がある。金田一春彦は、日本語の語彙を外国のそれと比較すると、(②)などに関する語は豊富であるが、天体、鉱物に関する語が乏しいことを指摘している。
次に、他の語との対立関係という点から語彙項目を分類する場合であるが、先の方法がまず大きなまとまりから小さなまとまりという方向であったのに対し、これは小さなまとまりから大きなまとまりへという方向である。具体的には、語と語の意義の対立関係にどのような型があるのかを考え、それを更に大きな語群に及ぼして語彙の体系に迫るというものである。
問1)文章中の(①)に入る最も適当なものを選べ。
- コーパス
- カテゴリー
- シソーラス
- レキシコン
問2)文章中の(②)に入れるのに不適当なものを選べ。
- 魚
- 鳥
- 気象
- 牧畜
問3)次の語の組み合わせで、他と性質の異なるものを選べ。
- 「産業」と「農業」
- 「両親」と「父母」
- 「旅館」と「ホテル」
- 「卓球」と「ピンポン」
問4)次の語の意味的関係が、他と性質の異なるものを選べ。
- 「売る」と「買う」
- 「貸す」と「借りる」
- 「出席する」と「欠席する」
- 「輸出する」と「輸入する」
[390]次の文章を読んで、問に答えよ。
意味論には史的意味論といわれる、意味の変化を研究する分野がある。
意味変化とは文字通り、語の意味が時代とともに変化していくことであるが、その過程は、初めは本来の意味とは異なった比喩的用法や誤用とされていた意味が、次第に社会的に認められるようになるものである。
変化の方向としては、一般に、拡大・縮小・転義などがある。
問1)意味の拡大、一般化の例として、最も適当なものを選べ。
- 固有名詞だった「瀬戸物」が、陶磁器の意となった。
- 酒の肴の意であった「さかな」が、魚類の意となった。
- 元来、広く家屋の敬称だった「みや」が、神殿の意となった。
- 謙譲の自称詞であった「未亡人」が、他人に対しての敬称の意となった。
問2)文章中の下線部の「比喩的用法」について、「のこぎりの歯」「雪の肌」のように類似性に基づいた用法を何というか。
- シミリ
- シネクドキ
- メトミニー
- メタファー