#12. 言語教育と情報

[181]新聞を学習活動のリソースとして使用する場合,著作権に関して正しいものを,次の1~4の中から一つ選べ。

  1. 著者が明記されている署名記事以外は,著作権を気にせずに使用できる。
  2. 無料で配布するのであれば,新聞記事を編集して教科書を作成する場合に著作権者の了解を得る必要はない。
  3. 営利を目的としない教育機関であれば,著作権者の了解を得なくても新聞を授業に必要な範囲で利用できる。
  4. 教師が教育目的で新聞記事をコピーして学習者に配ることは認められているが,学習者がコピーすることは認められていない。

[182]言語研究用に計画的に集められた電子化言語データの集積をコーパスという。データが電子化されているかどうかは必須ではないが,現実的にはコーパスはコンピュータで取り扱えることが前提となっている。
そのコーパスを利用して,より実際的な言語の仕組みを探る学問がコーパス言語学である。20世紀後半に英語研究を中心に発達した新しい言語研究の方法である。
コーパス言語学は,言語運用の(ア)な記述をもとに言語事象を実証的に解明しようとするという特徴を持っている。従来の(イ)による方法では気づかれにくかった現象を具体的に数値で示すことで客観性が保証される利点もあるが,一方で,A新しい方法論だけに研究手法に未開拓な部分がある。
なお,日本ではコーパスという名称は使われていないものの,国語学の分野において国立国語研究所などでコンピュータを利用した言語資料の研究は行われていた。現在は,国立国語研究所において,大規模な言語コーパス整備計画が進んでいる。
(参考:『新版日本語教育事典』大修館書店)

問1)文章中の(ア)に入れるのに最も適当なものを,次の 1 ~ 4 の中から一つ選べ。

  1. 詳細
  2. 膨大
  3. 客観的
  4. 定量的

問2)文章中の(イ)に入れるのに最も適当なものを,次の 1 ~ 4 の中から一つ選べ。

  1. 内省
  2. 論理
  3. 帰納
  4. 演繹

問3)文章中の下線部A について,どのような問題が考えられるか。不適当なものを,次の 1 ~ 4 の中から一つ選べ。

  1. 著作権の問題の調整が事前に必要で,簡単に公開できない。
  2. 分析の基礎となる「語」という言語単位の規定が,日本語では難しい。
  3. コーパスの利用者は専門家並みのITに関する知識・技術が求められる。
  4. ある言語運用の証拠は提示できるが,その運用法がないことは言い切れない。

[183]次の著作権法第31条と第32条を読み、各問いに答えよ。
第31条(図書館等における複製)
図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この条において「図書館等」という。)においては、A次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。(第1項から第3項省略)

第32条(引用)
  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、B公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他のC引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

問1  文章中の下線部A「次に掲げる場合」に該当しないものを選べ。

  1. 図書館資料の保存のための必要がある場合
  2. 大学関係者の求めに応じて、研究資料として、著作物を全部複製する場合
  3. 利用者の求めに応じて、著作物の一部分を、一人につき一部だけ複製する場合
  4. 絶版などで入手困難な図書館資料を、他の図書館からの依頼に応じて複製する場合

問2  文章中の下線部B「公正な慣行」及びC「引用の目的上正当な範囲内」に該当しないものを選べ。

  1. 引用する側とされる側の双方で、質的量的に主従関係がはっきりとしていること
  2. 引用されている部分が、他の部分と明確に区別されていること
  3. 引用文の文献名が暗示されていること
  4. 引用をする必然性があること

[184]次の文章を読み、各問いに答えよ。
 自然言語処理技術と密接に関係する言語研究分野に、コーパス言語学や計量言語学がある。言語学の用語では、A文章などを集積した言語資料をコーパスといい、電子化された言語資料を指すことが多く、主に言語分析に使われる。他に、新聞記事や物語が電子化されているものもある。主に文字化された資料であるが、音声コーパスや映像コーパスもある。通常、データベースとして提供されることから、言語データベースとも言われる。検索には検索ソフトを用いて、単語リストや用語検索などを作成できる。分析の結果は、例えば語彙指導の資料として使うことができる。日本語教育に関係が深いコーパスとして、日本語学習者の発話内容を文字化したものがある。これは、B学習レベル別の中国語、英語、韓国語の各母語話者の日本語発話資料である。日本語学習者が使う日本語の分析とともに、母語・学習レベルによる日本語の習得研究にも有益である。

問1.文章中の下線部Aと関係の深いものはどれか。

  1. 目標言語調査
  2. 評価方法の設計
  3. レディネス調査
  4. ダイアリー・スタディ

問2.文章中の下線部Bについて適当なものを選べ。

  1. KWIC
  2. KYコーパス
  3. コンコーダンス
  4. IPAコーパス

問3.文章中の下線部Bと関係の深いものはどれか。

  1. JSP
  2. LAD
  3. OPI
  4. ZPD

[185]次の文章を読み、問いに答えよ。
 世界の情報通信分野の革新はめざましく、インターネット利用人口は約5.4億人に及び、その9割以上が北米(33%)、ヨーロッパ(32%)、アジア太平洋(29%)の3地域で占められており、人口普及率35%以上の国は21カ国・地域に及んでいる。このような情報通信技術(ICT)革新と、それが各国や地域にもたらす影響を議論するために、2003年11月にジュネーブで世界情報社会サミットが開催され、それを準備するアジア地域の会合が、政府、国際機関、民間企業やNGOの参加のもとに、2003年1月東京で開かれ、東京宣言が採択された。

問1)2003年版「情報通信白書」によれば、日本のインターネットの人口普及率は次のどれか。
1. 24%  2. 44%  3. 54%  4. 74%

問2)2002年の調べで、ブロードバンドへのアクセス率がアジア太平洋地域で最も高い国はどこか。
1. 韓国  2. マレーシア  3. シンガポール  4. オーストラリア

問3)インターネットやパソコン等の情報技術を利用する能力、およびアクセス機会を持つ者と持たない者との間に情報格差が生じるとされる問題を何というか。

  1. 情報リテラシー
  2. フィアーウォール
  3. デジタルデバイド
  4. デキタルアーカイブ

問4)東京宣言での各国およびアジア太平洋地域の策定目標として挙げたものの中で、不適当なものを選べ。

  1. 知的財産権の保障
  2. 情報通信技術の安全
  3. エンパワーメントの達成
  4. インフラストラクチャーの開発