#08. 言語習得・発達【解答】
[66] ① d ② a ③ c ④ b
[67] 問1.a.4 b.1 c.2 問2.( 1 ) 1 ( 2 ) 2 ( 3 ) 3
問題解説
「情意ストラテジー」とは言語学習に影響を与える感情や態度、動機などをコントロールするストラテジー。「社会的ストラテジー」とは、説明や確認、修正をしてもらうために教師やネイティブ・スピーカー、またより堪能な学習仲間に質問をするなど自己の社会的な環境を利用するストラテジーのこと。
[68] ① 4 ② 1 ③ 4 ④ 4
問題解説
「インプット仮説」:クラッシェンの仮説。クラッシェンは学習者が現在持っている言語能力をわずかに上回る言語資料をi+1と呼び、言語習得に必要な条件は大量のインプット(i+1)に接触することだとした。
「アウトプット仮説」:スウェインの仮説。クラッシェンの主張が十分な条件とは言えないという立場から出された。スウェインは母語話者なみの言語能力獲得のためには、理解可能なインプットの接触に加えて、文法的な正確さ、語用論的な適切さ、まとまりを持った発話ができるように外(教師)から強制されなければならないと考えた。
「相互交渉仮説」:ロングの仮説。理解可能なインプットが習得を促すとすれば、それは学習者と母語話者との間で相互交渉が起こるためであり、このように学習者と母語話者との間におけるやりとり自体を重視する考え方。
「生活言語能力」:BICS( Basic Interpersonal Communicative Skills )の訳。
「学習言語能力」:CALP( Cognitive Academic Language Proficiency )の訳。
[69] 問1 2 問2 1 問3 3 問4 1
問題解説
問2 「逆戻り」は「バックスライディング」ともいわれる。
問4 規則の単純化ということから、接触言語としてのピジンが最も適切。
[70] 問1 4 問2 3 問3 4
問題解説
問1 これは学習言語能力のことである。カミンズは、コンテクスト化された言語に関する能力を生活言語能力(BICS:選択肢3)、非コンテクスト化された言語に関する能力を学習言語能力(CALP:選択肢4)と呼んで区別した。BICSは会話で使用される言語のため習得は容易だと考えられている。他方、CALPは読み書きの能力などに影響する認知能力のため習得は難しいと考えられている。
問2 カミンズによれば、二言語間で相互に影響しあうのは、主に学習言語能力のほうである。
[71] ① 3 ② 3 ③ 1 ④ 3
問題解説
①ZPD (zone of proximal development)とは、「発達最近接領域」と訳される。
②注意、記憶、言語、思考などを指す。人間の高次の精神活動の起源は、社会的活動の中にあるというのがヴィゴツキーの研究の中心的主張の一つである。
③学習の主体である子どもが、有能な支援者との相互行為の中で可能になったことを、やがて単独でできるようになる内化の過程を学習ととらえる。
④メタとは、ある物事を客観的に観察するもう一つの高次の視点のこと。例えば、(主観的な)自分の行為を、もう一人の自分が客観的に観察するということ。ゆえに、メタ認知活動は、認知過程全体をモニターしたりコントロールしたりすることによって、学習や理解が達成目標から外れそうなときに顕在化し、警告を発し、意識的な軌道修正を知らせる。
[72] 問1) (1) 1 (2) 1 問2) 4 問3) 4
問題解説
問1)
(1)正確なインプットを多く、繰り返し与え、定着を図るのは、行動心理学的な考え方である。
(2)オーディオ・リンガル・アプローチは、構造(主義)言語学と行動(主義)心理学を基礎理論としている。
問2)簡略化言語についての問題である。特にティーチャーズ・トークでは、情報質問よりも確認質問が多くなる。
問3)認知コード理論では、四技能にほぼ同じ程度の重点が置かれる。認知するという観点から、読み書きの教育も重視する。
[73] 問1) 3 問2) 4
問題解説
問1)学習者が学習初期の段階で、まだ目標言語の習得が不十分であるとき、決まった言語形式を付加することで、その機能を果たそうとする方略のことである。これを付加のストラテジーという。会話例は、その典型である。
問2)学習ストラテジーは、直接ストラテジー(記憶・認知・補償)と間接ストラテジー(メタ認知・情意・社会)に分けられる。メタ認知ストラテジーは、学習全体を支える方略で、特に学習計画・評価に関する方略である。
[74] 問1) 2 問2) 1
問題解説
問1)スイスの心理学者。ピアジェは、自己中心性などの子どもの思考の特質を研究。次いで乳児期からの知能や思考の発達過程を分析。のち、発生的認識論を構築し、新教育運動に寄与した。
問2)ヴィゴツキーは、子どもの発達の社会的、文化的側面に注目した。まず初めに社会的諸関係や共同主観としてあったものが、個人に内化され、個人の精神機能に転化するという考え方である。そこから子どもの言語についても、最初はコミュニケーションの道具としてあった言葉が次第に思考の道具になっていくのだと考え、ピアジェの自己中心語という考え方に反対した。さらに、発達と教育の関係を考えることを通して「発達の最近接領域」という概念を提唱するようになった。
[75] 問1)(1)1(2)1 問2)2
問題解説
問1)ゲゼルは階段上りの実験を通して、身体的・精神的な成熟を待たずに行う教育や訓練は効果をあげられないとした。レディネス(readiness)とは、学習成立のための準備性のこと。
問2)発見学習は、狭義には宣言的知識(○○は××である)の発見過程を学習者自身に追体験させる。実際には中心教材の選定、場の設定など、教師側に大きな負担がかかる。
[76] 問1)4 問2)2 問3)4
問題解説
問1)コーダー=個人特有方言、ネムサー=近似体系、セリンカー=中間言語
問2)目標言語の一つの規則や意味的特徴を異種類の項目に適用させること。過剰一般化ともいう。
問3)コーダーの論文(1967)により、それまで言語学習のマイナス要素とみなされていた学習者の誤りが再評価され、学習に不可欠なものとみられるに至った。
[77] 4
問題解説
学習成果があがらない原因の一つとして、学習に有効なストラテジーを使っていないことが考えられる。このような考えに基づき実践される指導。学習者トレーニングともいう。
[78] 問1)2 問2)3 問3)2
問題解説
問1)コーダーの論文(1967)によって、従来、言語学習のマイナス要素とみなされていた学習者の誤りが再評価され、学習に不可欠なものとみられる契機となった。
問2)セリンカー=中間言語、ネムサー=近似体系、コーダー=個人特有方言
問3)母語が人間に生得的に存在する言語獲得装置(チョムスキー提唱)を経て獲得されるという生成文法の考えに影響を受けている。
[79] 問1) 4 問2) 1 問3) 2
問題解説
問1)クラッシェンは、当初、無意識な知識(習得)と意識的な知識(学習)とを区別し、意識的な知識は、習得にはつながらず、この2種類の知識には連携はないとした。
問2)レディネスとは、学習成立のための準備性のこと。
問3)1980年代に認知主義の時代を迎え、ピネマンは言語習得を認知処理のプロセスと捉えた。限られた時間内に人間が処理できる言語情報は、記憶、認知能力などにより制約されるという考えを提唱した。
[80] 問1 3 問2 1 問3 1
問題解説
問2 人間はスキーマと呼ばれる階層化された知識構造を持っていて、そのスキーマに情報を当てはめながら仮説と検証を繰り返しているとされる。
問3 メタ認知とは、自分の認知活動をモニターし、適宜、制御していく能力で、通常の認知レベルより高次の認知レベルで認識する。
[81] 問1) 2 問2) 4 問3) 1 問4) 4
問題解説
問1)L1のパターンをL2に当てはめてうまくいく場合は「正の転移」、そうでない場合は「負の転移」という。
問2)過剰一般化ともいう。
問3)苦手な文法形式などをあえて使わずに、別の表現などを使うことがこれに当たる。
[82] 4
問題解説
カミンズが提唱した。どちらかの言語で認知力を発達させられれば、その能力は他方の言語にも移転するという説。多言語環境にある子どもたちには、学習言語能力の獲得が重要であり、そのためには母語と第二言語の相互の発達が必要である。発達相互依存仮説ともいう。
[83] 2
問題解説
メタ認知能力とは、自己をもう一歩高いところから見つめる能力。自分自身の学習計画や学習遂行状況を、この能力を使い自己点検することになる。
[84] 2
問題解説
4のポップアップ現象とは心理学では多重人格の症状で,人格がめまぐるしく入れ替わる症状を指す。
[85] 4
問題解説
1の「自然順序」とは「ある言語を学ぶには最も適した順序がある」としたクラッシェンの仮説。「自然順序仮説」ともいう。
[86] 1
問題解説
4の内発的動機づけは,好奇心や関心からもたらされる学習に対する動機である。
[87] 問1) 4 問2) 1 問3) 4 問4) 2
問題解説
問1)ストラテジーは「方略」「戦略」などと訳される。何事かをなすための知恵や工夫である。
問2)2は補償ストラテジー、3と4はメタ認知ストラテジーである。
問3)3の補償ストラテジーは、コミュニケーションストラテジーの一種。例は問2の選択肢2。
問4)学習者が自律して学習を進めることを学習者オートノミーと呼ぶ。