#06. 異文化コミュニケーションと社会

[52]次に述べる文は、「多言語主義」に関する説明である。読んで問に答えよ。
 多言語主義とは( ① )立場である。また、多言語主義は一国家内に限らず、( ② )の原理として論じられることもある。
 ただし、多言語主義は、特に( ③ )立場で主張されることが多いため、少数派の主張が受け入れられなかったときに、共存よりも( ④ )を持っている。こうなると本来の多言語主義というよりも( ⑤ )ということになり、民族対立などが避けられなくなるときもある。

問 文章中の( ① )~( ⑤ )に入る最も適当なものを、それぞれ次の選択肢の中から一つ選べ。
①:1. 言語の多様性を肯定的に評価し、発展途上地域において複数の言語が共存することを望ましいとする
2. 言語の多様性や差異を肯定的に評価し、一つの社会において複数の言語が共存することを望ましいとする
3. 言語の差異については判断中止(エポケー)し、現代社会において複数の言語が共存することの価値を評価しようとする
4. 言語の多様性を中立的に評価し、一つの社会において複数の言語が共存する場合にのみ、それらの価値を評価しようとする

②:1. さまざまな民族が国家を超えたレベルで理解し合うため
2. さまざまな言語話者が民族を超えたレベルで理解し合うため
3. さまざまな民族や言語話者が国境を超えたレベルで交流するため
4. さまざまな民族や言語共同体が国家国民を超えたレベルで共存するため

③:1. 少数派の権利や利益を擁護する
2. 多数派の権利や利益を敵視する
3. 少数派の権利や利益を抑圧する
4. 多数派の権利や助長する

④:1. 安直な諦念に走る消極性
2. 依存の態度に変わる柔軟性
3. 対立関係に陥る危険性
4. 独立運動に至る必然性

⑤:1. 複数の一言語主義の対立
2. 多言語主義同士の対立
3. 多数派による一言語主義
4. 少数派による一言語主義

[53]次の文章を読み、問いに答えよ。
バイリンガリズム、つまり2つの言語の使用は、1960年代までは子どもの認知の発達を遅らせるという悪影響を及ぼし、学業成績を低くするとされていた。70年代以後の研究では、第2言語との接触時点までに第1言語が十分発達していない場合には、母語と第2言語のどちらの能力も標準より大幅に低い状態に置かれるという報告がなされた。80年代以降、2言語を併用しているこどもは単一言語だけを使っている子どもに見られない能力を示すことが報告され、特に(1)の発達という点で優れているという報告がなされている。これは、自分の言語について対象的に捉えること、たとえば、英語でbananaと呼ばれるものが自分の地域言語では別の呼び名で呼ばれるというように、一つのものについて言語によって別の表現があるなどの認識が高いということである。

問1)文章中の下線部について、最も適当なものを選べ。

  1. ソリッド
  2. リミテッド
  3. ハイブリッド
  4. サスペンデッド

問2)文章中の(1)に入る、最も適当なものを選べ。

  1. 内言語
  2. 外言語
  3. メタ言語
  4. 高次精神機能

問3)バイリンガリズムのもとでの第1言語と第2言語の関係について、カミンズが支持するモデルはどれか。

  1. 一方の言語の発達は、他方の言語の発達に貢献し、両言語の間に相互依存的な発達関係が成立する。
  2. 第1言語で学習された内容は、第2言語で学習された内容に転移されず、また、逆方向の転移も起こらない。
  3. 言語少数派の児童が第2言語能力を伸ばすのに必要なのは、その言語にたくさん接触することで、母語に対する接触ではない。
  4. 頭の中に第1言語能力の風船と第2言語能力の風船があると仮定して、一方の風船を膨らますことができても、もう一方の風船を膨らますことはできない。

[54]次の文章を読み,下の問いに答えよ。
日本人のコミュニケーションの特徴を表す表現に(1)がある。ことばにしなくてもその裏に込められた意味を察すること、断定的な表現を避けたりする表現形式と関連し、日本人のコミュニケーションはことばがさほど重みを持たないという特徴を示している。
1960年代にアメリカで文化とコミュニケーションに関心が集まり、文化人類学者の(ア)は「異文化間コミュニケーション」という用語を紹介した。ここでのアプローチでは、対人関係、社会的文脈、行動様式、価値観などと関連づけて、ことばによるコミュニケーションの本質を文脈の中に求めながら、異文化間コミュニケーションを研究している。特に、言語が人間関係を作り上げるための機能を持っていることに注目し、話し手と聞き手の社会的関係、状況や文脈のとらえ方が同文化内のコミュニケーションと異文化間のコミュニケーションではどのように(2)があるかを考察する。(ア)は、文化を二つに分け、(3)が発達し、話し手と聞き手の間に共有されている情報や経験が少ない文化を(4)文化と名づけた。

問1)文章中の(1)~(4)に入れるのに最も適当なものを,次の1.~4. の中からそれぞれ一つずつ選べ。
(1)

  1. 以心伝心
  2. 沈黙は金
  3. 不言実行
  4. 口は災いのもと

(2)

  1. 漏れ
  2. ずれ
  3. 慣れ
  4. 流れ

(3)

  1. 全体主義
  2. 集団主義
  3. 開示主義
  4. 個人主義

(4)

  1. 低位言語
  2. 高位言語
  3. 低コンテクスト
  4. 高コンテクスト

問2)文章中の(ア)に入れるのに最も適当なものを,次の1.~4. の中から一つ選べ。

  1. ホール
  2. サピア
  3. バーンスタイン
  4. ファーガソン

問3)異文化間コミュニケーション成立のための諸要因を考える場合,最も重要度が低いと思われる要因を,次の1.~4. の中から一つ選べ。

  1. スクリプト
  2. ダイグロシア
  3. ステレオタイプ
  4. 内集団・外集団