#08. 言語習得・発達

[66]次の文の空欄に入る適当なものを下から選べ。
 1970年代から80年代初めにかけて、第二言語習得研究に最も大きな影響を与えたのは( ① )と言われている。( ① )は、学習者の現時点での言語能力をわずかに上回る文法構造や語彙を含むが、前後の文脈、発話の状況、背景知識、既有の言語知識などを利用して、その意味が理解できる言語資料を、その学習者の理解可能なインプットと定義し、それを( ② )と呼んだ。そして、言語習得に必要な条件は、大量の理解可能なインプットに触れることだと定義した。さらに( ① )は、この言語活動のうち、無意識のうちにされるものを( ③ )、意識的にされるものを( ④ )として厳密に区別し、両者の関係を完全に否定したのである。

a. ソシュール b. スウェイン c. マルティネ d. クラッシェン
a. i+1 b. 情意フィルター c. チャンク d. タスク
a. 教育(education) b. 学習(learning) c.習得(acquisition) d. 指導(guidance)
a. 教育(education) b. 学習(learning) c.習得(acquisition) d. 指導(guidance)

[67]次の文章を読んで、後の各問に答えよ。
 言語教育あるいは言語学習という活動においては、単に知識を詰め込んだり、またやみくもに話したり聞いたりするだけではその能力を十全に伸ばすのは困難である。そこで近年学習者の能力を伸ばすための方法がいろいろな方面から研究され始めている。
 その領域の一つにストラテジー研究といわれるものがある。ストラテジーとは日本語では「方策」「方略」などと訳されることが多いが、「工夫」のことであると考えればわかりやすいであろう。
 例えば、( 1 ) 相手に言いたいことをうまく伝えるためのストラテジーには、①新語創造や、表したいものの特徴の説明などで言い換える( a )。②母語から逐語訳をしたり、母語をそのまま使う( b )。③伝えたい内容を縮小したり、やや異なる内容を表す表現で済ませたり、あきらめたりする( c )。④非言語つまりジェスチャーなども武器になることもある。
 その他、( 2 ) 意味のよくわからない未習語に出会ったとき、演繹的に推論、分析したり、母語と比較、あるいは翻訳したり、また直接相手に確認したりするストラテジーもある。
 また、( 3 ) 学習者が学習を促進するために、自分の学習目的を明確にして、そのために学習計画を立て、実行し自己評価を行うなどというストラテジーも有効である。

問1.文中の( a )~( c )に入る適当な語を選べ。
 1.借用  2.回避  3.拡張  4.言い換え  5.逆戻り

問2.文中下線部( 1 ) ~( 3 ) のストラテジーを何というか。
 1.伝達ストラテジー  2.認知ストラテジー  3.メタ認知ストラテジー
 4.情意ストラテジー  5.社会的ストラテジー
 
[68]次の文章を読んで、後の問に答えよ。
 認知発達および言語習得に関する学説にJ・カミンズとM・スウェインによる( ① )といわれるものがある。この説では言語能力は( ② )と( ③ )とに分けられ、子どもにおけるこの二言語能力は基底部分で共通しており、第一言語で獲得した基底にある言語能力が第二言語にも転移するというものである。
 第一言語の発達が低い段階にある児童の場合、どちらの言語も十分に発達しない危険性を持つ。この言語能力の基底にある思考・認知システムが十分発達する年齢は一般に( ④ )と考えられている。
 カミンズによれば、上記のように二つに分けられた言語能力のうち、相互に転移するのは主に( ③ )の面であると想定されている。

問 文中①~④にはいる適切なものを一つ選べ。
:1.インプット仮説 2.アウトプット仮説 3.相互交渉仮説 4.相互依存仮説
:1.生活言語能力 2.言語運用能力 3.言語認知能力 4.学習言語能力
:1.生活言語能力 2.言語運用能力 3.言語認知能力 4.学習言語能力
④ :1.6~7歳 2.8~9歳 3.10~11歳 4.12~13歳
[69]次の文章を読み、各問に答えよ。
 中間言語(1972)とは、習得の段階に応じて変化していく第二言語学習者の言語体系を指し、母語とも目標言語とも異なった言語であるが、この語は(①)によって名づけられた。
 中間言語は習得が進むにつれて目標言語に近づいていくが、ときには習得されたと思われる項目や規則が話者の緊張などによって再び元の状態に戻ったり、あるいは不完全なままで定着したりする場合がある。前者を(②)、後者を(③)と呼ぶ。
 中間言語のいろいろな特徴をまとめると、学習者はそれぞれ目標言語の規則を単純化していると考えられる。中間言語は限られた知識を活用して大きな成果を生むように編み出される体系であると考えられ、この点から(④)化との類似性も指摘されている。

問1 ①に入る人物名を選べ。
  1.コーダー  2.セリンカー  3.クラッシェン  4.ファガーソン

問2 ②に入る適当なものを選べ。
  1.逆戻り  2.過剰縮小  3.スコープ  4.リミテッド

問3 ③に入る適当なものを選べ。
  1.一体化  2.一般化  3.化石化  4.形骸化

問4 ④に入る適当なものを選べ。
  1.ピジン  2.クレオール  3.セミリンガル  4.ネオダイアレクト

[70]次の文章を読み、各問に答えよ。
 バイリンガル研究において、異なる場面で使われる言語能力を、コンテクスト化された言語に関する能力とA非コンテクスト化された言語に関する能力に分ける場合がある。コンテクスト化された言語とは、日常言語・生活言語を指し示すもので、ある特定の場面での言語使用である。主に日常会話で使用されるので、ジェスチャーなどの助けもあり、習得は容易だと考えられている。それに対して、非コンテクスト化された言語とは、場面から離れた言語使用を意味する。つまり、学校・学習場面などで使用される言語で、習得に時間がかかるといえる。
 カミンズは、二言語使用にはB共通基底言語能力(Common Underlying Proficiency)が存在するとも述べている。そのため、カミンズは学習の際において、第一言語の能力が第二言語に移行・影響するという(①)を提唱した。

問1 文中下線部Aについて、カミンズはどのように呼んだか。

  1. Acquisition‐learning Hypothesis
  2. Limited English Proficient Student
  3. Basic Interpersonal Communicative Skills
  4. Cognitive‐Academic Language Proficiency

問2 文中下線部Bについて、最も適当なものを選べ。

  1. 第一言語と第二言語は基底部分でも異なっているが、特に生活言語能力で背反関係が見られる。
  2. 第一言語と第二言語は基底部分でも異なっているが、特に学習言語能力で背反関係が見られる。
  3. 第一言語と第二言語は表面的には異なっていても共有面があり、特に学習言語能力で依存関係が見られる。
  4. 第一言語能力と第二言語能力は表面的には異なっていても共有面があり、特に生活言語能力で依存関係が見られる。

問3 文中の①に入る適当なものを選べ。

  1. 言語過程仮説
  2. 言語相対仮説
  3. 言語分離仮説
  4. 言語相互依存仮説

[71]次の文章を読み、( ① )~( ④ )に入る適当なものを選べ。
 子どもは、大人とのかかわりの中でたえず社会化されるが、社会化の有効性は、その子どもの現在の発達のレベルとの関連で考えなければならない。ヴィゴツキーは、子どもが独力で示すことのできる認知的能力のレベルと、大人や、より年長の者の援助の元でのみ示すことのできるレベルとを区別し、その間を( ① )とした。学習は発達に先行し、最大の効果的な教育は、子どもの( ① )で起こる。
  ヴィゴツキーによると、人間のすべての( ② )は、社会的( ③ )の中で発達されるとされる。例えば、子どもと母親が共同でパズルを完成させる場面を考えてみよう。一番年少の子どもは、母親の教示がまったくわからないか、わかったとしても、教示と外れた行動を示すとしよう。この発達のレベルでは、母親からの援助は、パズルの学習には有効に働いていない。次に年長の子どもになると、母親の教示を元に、パズルを組み立てていくことができるが、パズルを完成させるために、次にどのピースを置いたらよいのかという( ④ )的な判断を一人ではできない。そのため、その部分を母親からの援助に頼ることになる。さらに年長の子どもになると、母親の援助がなくても、一人でパズルを完成させることができる。パズルを完成させていく子どもの行動と、それをコントロールする母親の間に成立していた外的なコミュニケーションが、子ども自身の内面で生起する内的なコミュニケーションに変化したのである。

  1. DQ (developmental quotient)
  2. GPS (general problem solver)
  3. ZPD (zone of proximal development)
  4. LASS (language acquisition supporting system)

  1. 認知地図
  2. 潜在記憶
  3. 高次精神機能
  4. レディネス

  1. 相互作用
  2. スキーマ
  3. モデリング
  4. モラトリアム

  1. メタ記憶
  2. メタ言語
  3. メタ認知
  4. メタ分析

[72]次の文章を読み、問いに答えよ。
 言語インプットとは、第二言語を聞いたり読んだりしている際に受容する第二言語の種類に関わる議論である。
 例えば、A教師や母語話者は、相手が話の内容を理解できるように、言葉をどのようにして第二言語学習者のレベルに引き下げるのであろうか。自然な状況で受容するインプットは、形式的に教室で学ぶ場合のインプットと比べて、どのような違いがあるのだろうか。(1)的な言語学習理論では、教師からの正確で統制されたインプットが非常に重要であると考えられている。言語学習は、順序よく練り上げられたものを提示し、多くの練習と強化を行わなければならない。
 一方、チョムスキーの言語習得の心理主義的立場に立てば、インプットは学習者の生得的な言語獲得装置を動作させるだけのものである。
 彼の論では、言語は行動心理学的な過程、すなわち外界からの刺激と、それに対する反応という単純な過程では習得できず、生来人間に備わった創造能力であるとする生得能力説の立場を取る。しかも、それは内在化された文法規則を発展させることによって、複雑な言語生成を行うものである。この論はB認知コード学習理論と言われ、その方法論は、(2)と(1)を理論的基盤としたフリーズのオーディオ・リンガル・アプローチとは対立する特徴を多く持つ。

問1)文章中の(1)、(2)に入る最も適当なものを選べ。
(1):1. 行動心理学  2. 認知心理学  3. 社会心理学  4. 集団心理学
(2):1. 構造言語学  2. 生得文法  3. 社会言語学  4. 心理言語学

問2)文章中の下線部Aについて、教師や母語話者がその発話を第二言語学習者のレベルまで引き下げた場合の一般的な特徴として、最も不適当なものを選べ。

  1. イントネーションが誇張され、声も大きくなる。
  2. 話すスピードが遅くなり、ポーズの頻度と長さが増加する。
  3. 使用される語彙は、より基本的なものが多く、慣用的なものが少なくなり、多様でなくなる。
  4. 質問者が答を知っていることを聞く確認質問よりも、答を知らないことを聞く情報質問が多くなる。

問3)文章中の下線部Bについて、認知コード学習理論に関する記述として、最も不適当なものを選べ。

  1. 既習項目から新出項目を認知することにより学習効果があがるの考えから、新出項目は既習項目に関連づけて提示される。
  2. 学習者が、自分の母語と目標言語との、音韻、言語構造、思考における相違を認識していれば学習効果があがると考える。
  3. 人間の脳には、無限の文を生成する能力が存在するという理論に基づき、その規則を与え、演繹的に文を作らせるのが効果的だと考える。
  4. 四技能(話す・聞く・読む・書く)のうち、音声言語を最も重要視し、読み書きは音声言語をある程度習得してから指導するのがいいと考える。

[73]次のそれぞれの問いに答えよ。
問1)「先生、韓国のキムチ、食べる、できますか」「(キムチは毎日)食べじゃない」という初級の日本語学習者の会話について、最も関係が深いと思われる現象を選べ。

  1. 母語の干渉
  2. 語用論的転移
  3. 言語処理の方略
  4. コードスイッチング

問2)オックスフォードは、学習者が第二言語を習得する過程において使用するさまざまな学習ストラテジーを分類したが、メタ認知ストラテジーに相当するものはどれか。

  1. レベルの高い学習者や母語話者との交流で学習を促進させる。
  2. 新しい文型を母語と比較して分析したり、意味を推測したりする。
  3. 関連する語彙をグループ化したり、語呂合わせで覚えたりする。
  4. 目標と計画を明確化したり、自分の発話が正しいかチェックしたりする。

[74]次の文章を読み、各問いに答えよ。
 近年、学習環境において様々な実践が展開され、教師中心の指導から学習者中心の指導がより重視されるようになってきた。その骨格をなす理論として構成主義がある。
  学習者個人が能動的に環境に働きかけ、学習し発達していくと同時に知識を構成していくという学習環境の基盤の確立には、( ① )の構成主義、認知発達理論の貢献が大きい。
  その後、情報化、国際化、環境問題など地球規模の課題への教育の取り組みと、日常生活の重視もあって、学習環境は学校を超えて、地域の図書館、博物館などから、情報ネットワークを介して外国にも及びつつある。
  そこには、人間同士の協力を強調する社会構成主義やヴィゴツキーによる社会文化的アプローチの理論がある。そこで、学習指導においては、特に、グループ学習、共同学習、協調学習が盛んになり、学習者同士の協力による問題解決や知識構成が目指されている。

問1) 文章中の( ① )に入る最も適当なものを選べ。
1. サルトル  2. ピアジェ  3. フーコー  4. バフチン

問2) 文章中の下線部の考え方とは関係が薄いと思われるものはどれか。
1. 自己中心性  2. 高次精神機能  3. 発達最近接領域  4. ピア・ラーニング

[75]次の文章を読み、それぞれの問いにこたえよ。
発達の規定要因として、成熟要因と学習要因の二つがある。成熟とは、遺伝など内的な要因によって、時間の経過に伴い自然に能力や機能、行動、形態などに変化が生じることである。成熟は、環境とはまったく無関係に発達が進行するという点で学習とは対概念を形成する。
「成熟優位説」に立つ(1)は、個々の学習への準備状態の成熟を待って教育すべきという(2)待ちの教育観を示した。
これに対して「学習優位説」の立場に立つブルーナーは、知的能力の発達には環境要因の影響が大きいとして、適切な刺激を与えることで(2)の形成を促進できるという(2)促進の教育観を提示した。特に知的な側面に関しては、適切な刺激を与えることで発達を促進できることは明らかになっており、それが早期教育を支持する根拠ともなっている。

問1)文章中の(1)、(2)に入る最も適当なものを選べ。
(1)1.ゲゼル2.ワトソン3.ローレンツ4.ソーンダイク
(2) 1.レディネス2.アタッチメント3.アイデンティティ4.インプリンティング
問2)ブルーナーが提唱した学習として最も適当なものを選べ。

  1. 協同学習
  2. 発見学習
  3. モデリング
  4. 銀行貯金型学習

[76]次の文章を読み、問いに答えよ。
第二言語(L2)の学習者の言語は、その個人に特有な「個人特有方言」であり、たゆみない仮説形成と仮説検証の試行錯誤を経て徐々に目標言語に近づいていく「近似体系」である。それは、構造的に母語と目標言語の中間に位置するという意味で、(1)は、これを「中間言語」と呼んだ。この中間言語には、(2)や母語の転移などから影響を受けやすいという点で「浸透性」があり、それは学習者が既習の規則に基づいて言語を使用するという点で「体系性」がある。

問1)文章中の(1)に入る適当なものを選べ。

  1. コーダー
  2. スキナー
  3. ネムサー
  4. セリンカー

問2)文章中の(2)に入る適当なものを選べ。

  1. 過剰矯正
  2. 過剰般化
  3. 形式陶冶
  4. 実質陶冶

問3)文章中の下線部の立場での誤用の考え方として適当なものを選べ。

  1. 誤用は排除すべきものである。
  2. 誤りは指導技術で矯正されるものである。
  3. 誤用は疲労や注意力の欠如から作られるものである。
  4. 誤りは学習者に関する重要な情報を提供するものである。

[77]次の記述と最も関係の深いキーワードを選べ。
教師の役目は、単に文法や語彙といった言語項目・知識を伝授するだけでなく、より自律的な学習者が育つように、学習を効率よく進めるためのスキルや方略を指導することも重要である。
1.参与観察
2.カンファレンス
3.適性処遇交互作用
4.ストラテジー・トレーニング

[78]次の文章を読み、各問いに答えよ。
外国語学習者の誤用を詳しく分類すると、母語からの影響だけでは説明できないものが多いことに気づく。この事実からAコーダーは第二言語習得者の言語は、それ自体、規則的体系を持ち、言語的記述が可能な「言語」であると唱えた。しかし、それは目標言語に向かう発達過程にある中間的なものであることからB「中間言語」と呼ばれる。これは、われわれの母語が人間に生得的に存在する(C)を経て獲得されるものであるという生成文法の考えが、第二言語の習得研究にも影響を及ぼしたものであるといえよう。

問1)文章中の下線部Aの提唱した理論として適当なものを選べ。

  1. 対照分析
  2. 誤用分析
  3. 因子分析
  4. 談話分析

問2)文章中の下線部Bの用語を提唱した人は誰か。

  1. ラドー
  2. ネムサー
  3. セリンカー
  4. チョムスキー

問3)文章中のCに入る適当なものを選べ。

  1. 臨界期
  2. 言語獲得装置
  3. 情意フィルター
  4. 発達最近接領域

[79]次の文章を読み、後の問いに答えよ。
 1970年代の言語習得研究に大きな影響を及ぼしたクラッシェンのモニター理論は、生得的で無意識的な知識と、学習によって得られた知識を区別し、当初 Aこの2種類の知識に連携がないとした。また、ピネマンは、言語習得は段階を追って進むものとし、B段階を飛び越えて教えても効果はないとした、これを(C)という。

問1)文章中の下線部Aについて、最も適当なものを選べ。

  1. 臨界期仮説
  2. 分離基底言語能力モデル
  3. インターフェイスの立場
  4. ノン・インターフェイスの立場

問2)文章中の下線部Bの効果を上げるための要因として最も適当なものを選べ。

  1. レディネス
  2. 高次精神機能
  3. 情意フィルター
  4. スキャフォールディング

問3)文章中の(C)に入る最も適当なものを選べ。

  1. ホーソン効果
  2. 教授可能性仮説
  3. インプット仮説
  4. ピグマリオン効果

[80]次の文章を読み、後の問いに答えよ。
 学習とは、単なる反復練習による反応の強化ではなく、能動的な知識体系の構築であるというのが認知心理学の基本的な考え方である。入力としての知覚情報や言語情報は、解釈メカニズムを経て知識体系の中に組み込まれていく。このときに部分的な要素の分析を組み合わせていくことによって対象を処理する(A)処理と、文脈や既有知識の枠組みを用いて予想や予期をしながら理解していく(B)処理とがあり、人間はこれらを柔軟に使って整合的な知識体系を作り上げようとする。
 また、教育においてしばしば強調される自己学習力と認知研究の関わりは深い。人間が自らの認知過程をどのように把握し、制御しているかは(C)と呼ばれる。これを育てることがまさに自己学習力をつけることであり、学習観や学習方法に関する研究も盛んになってきている。

問1.文章中の(A)と(B)に入る組み合わせとして最も適当なものを選べ。

  1. A=宣言的 B=手続き的
  2. A=手続き的 B=宣言的
  3. A=ボトムアップ B=トップダウン
  4. A=トップダウン B=ボトムアップ

問2.文章中の下線部について最も適当なものを選べ。

  1. スキーマ
  2. 競合モデル
  3. プロトタイプ
  4. ワーキング・メモリー

問3.文章中の(C)に入る最も適当なものを選べ。

  1. メタ認知
  2. モニター
  3. リテラシー
  4. アフォーダンス

[81]次の文章を読み、各問いに答えよ。
L1でもL2でもない学習者が作り上げた独自の発達途上の言語体系のことを「中間言語」とセリンカーは呼んだ。
 セリンカーは中間言語の形成に影響を及ぼす要素として5つを挙げていた。まず、L1からの( A )である。これはL1のパターンをL2に当てはめることだが、正の( A )も負の( A )も起きる。二つ目は、言語規則の( B )で学習者は少ない規則で多くのことを表現しようとするので、適用できないコンテクストのまで規則を適用してしまうのである。三つ目は、訓練の転移の可能性である。これは、教え方が適切でないために、教室学習の弊害により起きる誤りである。四つ目は、伝達ストラテジーの使用である。言語能力が不十分な場合は、身振りや言い換えを使ったり、使用を( C )したり、L1にコード・スイッチングしたりする。五つ目は、L2の学習ストラテジーである。(中略)これらの要素が絡み合って、学習者それぞれの文法体系が築かれるとされたのである。

問1)文章中の( A )に入る最も適当なものを選べ。

  1. 干渉
  2. 転移
  3. 有標
  4. 交渉

問2)文章中の( B )に入る最も適当なものを選べ。

  1. 再構築
  2. 過剰使用
  3. 習慣形成
  4. 過剰般化

問3)文章中の( C )に入る最も適当なものを選べ。

  1. 回避
  2. 制限
  3. 留保
  4. 強化

問4)上記文章中に挙げられた五つの要素によって、中間言語の発達過程で「ある項目が誤用のまま改善されないで残る」現象が見られる。この現象を何と呼ぶか。

  1. 潜在化
  2. 言語内エラー
  3. 意識化
  4. 化石化

[82]次の記述と最も関係の深いキーワードを選べ。
 母語と第二言語との関係は、子どもの母語やそれに伴う認知力が発達しているほど第二言語も発達しやすくなる。母語が低い発達段階にあると第二言語や認知力の発達も難しくなる。

  1. 状況モデル
  2. 有標性差異仮説
  3. フィルターモデル
  4. 言語相互依存仮説

[83]次の問いに答えよ。
学習者一人一人が自分の学習を計画し,それに自ら積極的に取り組むという自律学習を促進するために必要な能力として,最も適当なものを,次の1 ~ 4 の中から一つ選べ。

  1. 言語能力
  2. メタ認知能力
  3. 言語運用能力
  4. 社会文化能力

[84]次の記述と最も関係の深いキーワードを,一つ選べ。
 単語のリストを記憶する時には,リストの中の位置(系列位置)によって,記憶のしやすさに違いが出てくる。40語からなる単語のリストを1語1秒程度の速さで視覚的に提示して,直ちに,できるだけたくさん思い出してもらう実験を数多くの人に行うと,最終位置の数個の単語の再生成績がもっとも良いという結果になる。
1.逆行性健忘  2.新近性効果  3.自発的回復  4.ポップアップ現象

[85]次の記述と最も関係の深いキーワードを,一つ選べ。
 ある研究によると,日本語学習者がイ形容詞の否定形を習得するまでには,①「遠いくない」②「遠いじゃない」「遠いくない」③「遠くない」のようなプロセスをたどるという。このようにある1つの項目(ここでは否定形)を習得する場合に,普遍的な習得の道筋を必ず通る。

  1. 自然順序
  2. 出現順序
  3. 正用順序
  4. 発達順序

[86]次の記述と最も関係の深いキーワードを,一つ選べ。
学習者の特徴によって,どのような教育方法や訓練方法が効果的かということが異なってくる現象

  1. 適性処遇交互作用
  2. 有標性差異仮説
  3. 最近接発達の領域
  4. 内発的動機づけ

[87]次の文章を読み、各問いに答えよ。
 学習ストラテジーとは、言語知識や技術をより効率的に習得するために学習者が (ア) のことであり、学習者が主体的に学習に取り組み、目標言語でのコミュニケーション能力を身につけるために必要なものである。
 学習ストラテジーにはAさまざまな種類があるが、学習者はそれらを組み合わせて学習を進めている。
 たとえば、文を単語に分割して意味を考える、その単語を文脈の中で覚える、B実際の練習の機会を得るために目標言語話者と友達になる、という一連の流れの中にはいくつかのストラテジーが含まれているのである。
 学習ストラテジーの研究は、学習の「結果」ではなく「過程」に研究者の関心が移行する中で発展してきた。学習者を優れた言語学習者にするためには、学習ストラテジーを意識させることが必要であり、そのことが、C自分で学習を進めていける自律した学習者を育てていくことにつながるのである。
 また、学習ストラテジーに影響を与えるものとして、学習者ビリーフの問題もある。学習者がどのようなビリーフを持っているか、教授者のビリーフとギャップは無いかという点についても十分に注意を払う必要がある。

問1)文章中の (ア) に入れるのに最も適当なものを、次の中から一つ選べ。

  1. 持っている潜在意識
  2. 構築している背景知識
  3. 活性化させる認知能力
  4. 使用するテクニックや工夫

問2)文章中の下線部A「さまざまな種類」とあるが、学習ストラテジーのうち「情意ストラテジー」と呼ばれるものとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。

  1. 他の学習者と学習に伴う不安感などについて話し合う
  2. 思い出せない単語を他の言葉を使ってなんとかして伝える 
  3. テストなどの目標に向けて学習計画を自分で立てる
  4. 自分の学習をモニターし、必要があれば調整する 

問3)文章中の下線部Bのようなストラテジーとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。

  1. 認知ストラテジー
  2. メタ認知ストラテジー
  3. 補償ストラテジー 
  4. 社会的ストラテジー

問4)文章中の下線部Cのように、自分で学習を進めていくことを何と呼ぶか。最も適当なものを、次の中から一つ選べ。

  1. アイデンティティ
  2. オートノミー
  3. パフォーマンス
  4. イマージョン