#07. 言語理解の過程

[55]
(1) 次の説明は、下記の選択肢のどれについて書かれたものか。
人間はこの世に生まれてから周囲のものや人との交流を行い、それによりいろいろな経験や学習を行って育っていく。つまり、人間は日々経験する物事や状況などを整合的に理解するための構造化された知識の枠組みを作り、あることを理解しようとするとき、この枠組みに照合して解釈を行うのである。 
1 ボトムアップ
2 トップダウン
3 アウトプット
4 インプット

(2) 上記の文の「構造化された知識の枠組み」のことを何というか。
1 スキーマ
2 フィラー
3 ストラテジー
4 ディスコース

[56]次に述べる文は、人間の記憶に関する説明である。読んで各問に答えよ。
 記憶とは、外界の情報を取り込み、符号化し、貯蔵し、必要に応じて検索し、利用していく一連の情報処理過程のことである。人間の記憶の仕方には短期記憶と長期記憶の2種類がある。一旦短期貯蔵庫に入った記憶を長期記憶に転換するために人はいろいろな工夫を行う。例えば、ある英単語を覚えようとするとき、何度も声に出してみたり、心の中で繰り返したりするが、このような行動を認知心理学では( ① )と呼んでいる。また、人が一度に覚えられる短期記憶の量は普通の人で( ② )チャンク程度といわれている。
上述のような過程をとった記憶が長期貯蔵庫に転送され、長期記憶となる。この長期記憶は、( ③ )の記憶と( ④ )の記憶に大別される。
( ③ )の記憶は、さらに( ⑤ )の記憶と( ⑥ )の記憶に分類される。

問1 ( ① )に入る適当なものを選べ。
1)コーパス   2)リハーサル   3)インターアクション   4)ファシリテーター

問2 ( ② )に入る適当な数を選べ。
 1)3    2)7   3)10    4)12

問3 ( ③ )~( ⑥ )に入る適当なものを選べ。
 1)手続き的知識    2)意味    3)エピソード   4)宣言的知識
 
[57]次の記述と最も関係の深いキーワードをそれぞれ選べ。
問1)記憶の忘却曲線で知られるエビングハウスは、自分を実験の被験者にして、記憶の実験的測定を行った。このとき用意された刺激は、任意のアルファベット3文字の無意味つづりであったが、これはそのときの実験法である。

  1. 内観法
  2. 節約法
  3. 投映法
  4. 連想法

問2)トールマンは、報酬による強化を学習の成立条件とみなす強化説に対し、無報酬の場合にも環境の認知的構造化に基づいて学習が生ずることを強調した。

  1. 観察学習
  2. 潜在学習
  3. バズ学習
  4. プログラム学習

[58]次の文章中の(①)~(⑤)に入る適当なものをそれぞれ選べ。
 1970年代に入って、認知心理学における知識に関する研究は、記憶を中心に進められたが、それとは別に(①)理論という、知識についての注目すべき研究の流れが生じてきた。(①)は、特定の概念を表象するための構造化、組織化された知識の集合と考えられている。また、同時期にこれと同様の概念を表すものとして、フレーム、あるいは(②)という術語も用いられている。これらの理論は、知覚、言語理解、記憶の想起などの過程における(③)処理の進行をうまく説明するものであるが、まだ検討すべき課題もいろいろとある。
  ところで、知識の中には、さまざまな認知的活動を遂行する際のやり方に関する知識、(④)がある。この知識の場合、実際の認知的活動の遂行を伴わないと意図的に想起するのは難しく、また、遂行中においても、想起されてはいるが、意識されない場合が多い。この知識の表象に関する研究は、未知の部分が多いが、現在では、記憶の情報処理をモデル化する場合は(⑤)を用いて表されることが多い。


1 イメージ  2 スキーマ  3 プロトタイプ  4 スポットライト・メタファー

1 パラダイム  2 レキシコン  3 スクリプト  4 クライテリオン

1 場独立型  2 場依存型  3 ボトムアップ型  4 トップダウン型

1 意味記憶  2 宣言的記憶  3 手続き的記憶  4 エピソード記憶

1 アルゴリズム  2 フィルター・モデル  3 プロダクション・システム  4 階層型ネットワーク・モデル

[59]次の文章を読み、各問いに答えよ。
 「あなたはソバとラーメソのどちらが好きですか」この文をさっと読んで違和感を覚えなかった人は(①)処理を行っていたといえる。ソバからラーメンを連想することによって、文字を一つ一つ読まなくても意味を理解することができたからである。文字列を逐一読んでいたなら、ラーメソという文字列は非単語なので、変だと感じるはずである。このタイプの情報処理は、麺類等の概念や知識に引きずられる形で進行することから(②)とも呼ばれる。
 ところで、駅の雑踏などの雑音のひどい場所で友人らと会話に夢中になっていると、いつの間にか雑音や他の人の話は耳に入らなくなる。しかし、隣のグループの会話に自分の名前が出てくると、突然それが聞き取れたりする。そのような現象を(③)という。これは注意の働きを示す典型例としてよく知られている。
 注意という心的資源には限りがあるため、なるべく効率的に配分することが必要とされる。言語認知の場合、その助けとなるのがスキーマである。

問1) 文章中の①~③に入る最も適当なものを選べ。

  1. チャンキング
  2. トップダウン
  3. ボトムアップ
  4. リフレーミング
  5. 対話処理
  6. 自然言語処理
  7. 概念駆動型処理
  8. データ駆動型処理
  9. バーナム効果
  10. ストループ効果
  11. サブリミナル効果
  12. カクテルパーティー効果

問2) 文章中の下線部「スキーマ」に類似した概念として最も適当なものを選べ。

  1. カテゴリー
  2. スクリプト
  3. メタファー
    4 ミラーリング

[60]次の文章を読み、各問いに答えよ。
 短期記憶の存在を示す根拠として重要なのが、系列位置効果である。この効果は、記銘リスト提示直後、リスト内の項目を順序かまわず自由再生させる際に、リスト内のも項目数にかかわらず、最初と最後の数項目の再生率が、リストの中間部のそれと比べて高くなる現象である。
  ( ① )によると、系列の最初の部分の再生率が高いという( ② )が見られるのは、最初の数項目がまだ空の短期貯蔵庫に入るため、必然的にリハーサルを多く受け、長期記憶として定着する可能性が高いからとされる。
  これに対して、最後の数項目の再生率が高いという( ③ )は、リスト提示後、それらの項目はまだ短期貯蔵庫の中にあって、そこから直接読み出せるとされる。実際、数字の逆唱などの妨害課題を再生前に課し、再生を遅延させると( ④ )は消失する。
  このように、短期記憶と長期記憶とは別の存在と仮定することで、系列位置効果がうまく説明できる。

問1) 文章中の( ① )に入る最も適当なものを選べ。

  1. 二重貯蔵モデル
  2. フィルターモデル
  3. 共有基底言語能力モデル
  4. 分離基底言語能力モデル

問2) 文章中の( ② )~( ④ )に入る最も適当な組み合わせを選べ。

  1. ② 初頭効果    ③ 新近性効果    ④ 初頭効果
  2. ② 初頭効果    ③ 新近性効果    ④ 新近性効果
  3. ② 新近性効果  ③ 初頭効果      ④ 初頭効果
  4. ② 新近性効果  ③ 初頭効果     ④ 新近性効果

[61]次の文章を読み、(1)~(5)に入る適当なものをそれぞれ選べ。
教授活動の原理、原則の背景として、言語教育の世界はこれまで多くの心理学の成果を積極的に取り入れてきた。
消化腺の研究で第1回ノーベル医学賞を受賞したパブロフ(Pavlov)の、刺激によって誘発される(1)を古典的条件づけという。それに対して、行動の多くは刺激によって引き起こされるというよりも自発的に生じるとしてスキナー(Skinner)は、このような条件づけを(2)型の反応として重視した。
その後、シャンク(Schank)らは、日常的に決まりきった行動や出来事の系列についての知識を(3)と名づけた。意図的に、部分的に抜いておいた台本を再生させると、被験者は復元して再生することがわかった。
ミンスキー(Minsky)は、人間が三次元的に見て、たとえば見えない机の脚を補って「見る」こと、逆に一部しか見えない品物を具体的に理解するときの知識を利用した認知過程を、コンピュータの画像処理になぞらえて、人間には理解のための(4)が備わっていると考えた。(3)も(4)も概念は似ており、(5)効果とも考えられる。
(1): 1.認知 2.反射 3.行動 4.無条件
(2): 1.オペラント 2.レスポンデルト 3.レスポンス 4.サイコロジカル
(3): 1.トピック 2.リサイクル 3.ユニット 4.スクリプト
(4): 1.スキーマ 2.フレーム 3.マクロ 4.ビットマップ
(5): 1.文脈 2.談話 3.構文 4.文章

[62]次のそれぞれの問いにこたえよ。
問1)心の動きや状態を観察して、心理過程を明らかにしようとする研究方法を何というか。

  1. 節約法
  2. 投影法
  3. 内観法
  4. 連想法

問2)系列位置効果によって、どのような記憶のモデルが説明できるか。

  1. 初頭効果、親近性効果、ともに短期記憶に関係する。
  2. 初頭効果、新近性効果、ともに長期記憶に関係する。
  3. 初頭効果は短期記憶に、親近性効果は長期記憶に関係する。
  4. 初頭効果は長期記憶に、親近性効果は短期記憶に関係する。

[63]次の文章を読み、後の各問いに答えよ。
「ケメ,ホマ,コニ,…」など,A 30個の無意味語を,一定の間隔を空けて読み上げた後,その単語を思い出せるだけ思い出すという実験がある。こうしたテストを多数回行い,リスト内の正解率を出すと最初の方と最後の方の単語をよく覚えているという結果になる。項目数を20個にしても40個にしても結果は同様である。単語の位置によってどのくらい思い出しやすさが違うかは,U字型の曲線になる。これを(1)という。
最初の項目の成績上昇を(2),最終の項目の成績上昇を(3)と呼ぶ。 (2)は,まだ頭の中が真白な状態のときに単語が入ってきて,B 頭の中でその単語が繰り返され,しっかり覚えることができることによる。これは,Xに関係している。また,(3)は,ついさっき聞いたばかりだから覚えているということである。これは, Yに関係している。これらは,記憶がXとYの二つから成り立っていることを示している。

問1)
文章中の下線部Aについて最も適当なものを,次の1~4の中から一つ選べ。

  1. SD法    2. 節約法    3. 再認法    4. 自由再生法

問2)
文章中の(1) ~ (3)に入れるのに最も適当なものを,次の1~4の中からそれぞれ一つずつ選べ。

  1. (1) 1. 学習曲線 2. 忘却曲線 3. 系列位置曲線 4. U字型発達曲線
  2. (2) 1. 天井効果 2. 初頭効果 3. ピグマリオン効果 4. プライミング効果
  3. (3) 1. 後光効果 2. 床面効果 3. ホーソン効果 4. 新近性効果

問3)
文章中の下線部Bをなんと呼ぶか。最も適当なものを,次の1~4の中から一つ選べ。

  1. カテゴリー化     2. リハーサル     3. スクリプト     4. ラポール

問4)
文章中のXとYの組み合わせとして最も適当なものを,次の1~4の中から一つ選べ。

  1. X=短期記憶 Y=長期記憶
  2. X=長期記憶 Y=短期記憶
  3. X=宣言的記憶 Y=手続き的記憶
  4. X=手続き的記憶 Y=宣言的記憶

[64]次の記述と最も関係の深いキーワードを,一つ選べ。
 情報処理のプロセスで,まず予備分析・文脈情報・知識などに基づいて心的な仮説が形成され,その仮説を検証して処理を進める方法である。もし仮説が棄却されれば,新たな仮説で検証がすすめられ,安定するまで循環的に繰り返される。

  1. スキミング
  2. スキャニング
  3. トップダウン処理
  4. ボトムアップ処理

[65]トップダウン処理にあたる読解活動と言えるものはどれか。最も適当なものを,次の1~4の中から一つ選べ。

  1. 意味のわからない語彙を辞書で調べる。
  2. 文法構造を考えながら一文を解釈する。
  3. 接続詞に注目して,前文と後文の関係を理解する。
  4. 前半の内容を読んで理解した後,後半の内容を予測する。